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【オーバーツーリズムの解消にもつながるスローツーリズム】

インバウンド復活にわく観光業界ですが、一方で有名観光地において問題になっているのが「オーバーツーリズム」です。
人気の観光地では連日多くの人々が押し寄せて過密状態となり、公共交通機関がマヒしたり、観光客のゴミすてによる環境問題、また地域周辺での迷惑行為など多くの問題が発生しています。
その地域に住む住民の方にとっても、生活の場が脅かされる深刻な問題となっています。

こうした状況は、利益や効率性を優先した団体旅行などの「マスツーリズム」型観光スタイルが主流だった頃から、環境破壊などの観点で問題視されていました。
そういった流れに疑問を持ち、イタリア発祥のスローライフ、スローフードに代表される”スロー”(ゆっくりな)な生き方へ人々の志向が向かっていく中で、提唱されたのが「スローツーリズム」です。



スローツーリズムとは

自分のペースで”ゆったり”と自由な旅を楽しみ、自然環境に配慮して地域の人々や文化にふれあいながら、その価値を再確認する。現代における多様な旅行者のニーズを満たすと共に、地方への観光促進によって地域活性化にもつながる旅のスタイルです。



●オーバーツーリズムとの比較

スローツーリズムとオーバーツーリズムを比較してみると、下記のようになります。

  スローツーリズム オーバーツーリズム
価値観 ゆったりと自由を求める 時間や費用に対して効率性を重視
持続可能性 伝統や文化への関心を高め、
自然や周辺への環境へ配慮
文化や自然とのふれあいが希薄
地域との関係 地域コミュニティとの
良い関係性を重視
観光目的達成のために地域社会へ
負の影響を与えてしまう


都市部や地方の人気観光地には旅行者が大量に押し寄せ、過度な混雑と環境への負荷が生じます。これが「オーバーツーリズム」です。

一方「スローツーリズム」は、混雑を避けたい旅行者が人知れぬ観光地を自由に楽しむことを好むので、観光地の一極集中を回避できるメリットがあります。
またシーズンに合わせて上手くプロモーションをすることにより、人気観光地での人の流れを分散することも可能となります。そして時間をかけて自然や伝統文化、地域との関わりをもたせることで、地方の魅力も発信できるでしょう。

つまり、取り組みによっては、オーバーツーリズムの解消はスローツーリズムにつながり、さらには地域活性化も見込めるのです。



スローツーリズムの事例

ここからは、実際にスローツーリズムを実践する地域を紹介します。

①歴史薫る「街あるき」を通して地域の魅力を伝える
 ー信州とうみ観光教会(長野県)
 ▶https://tomikan.jp/slowtourism/

歴史薫るローカルの魅力を伝える「街あるき」を、季節や時間などを好みに合わせて提案。有名観光地にはない、のんびりとした時間の中で地域の生きた文化にふれることができます。



②地域の自然、伝統文化、食を深くあじわう
 ー能登(石川県)
 ▶https://slow-tourism.jp/
 ー中能登町(石川県)
 ▶https://www.town.nakanoto.ishikawa.jp/material/files/group/4/surosiryou.pdf

県を挙げてスローツーリズムを推進する石川県。自然豊かな地域の特性を生かし、食、遺跡、慣習などを通して伝統文化を紹介し、また地域の人々とのふれあいを重視したアイデアを提案しています。

先の地震では甚大な被害を被りましたが、この地に息づく風土や人々の想いは、復興後の「スローツーリズム」でも変わらないでしょう。



③世界有数の観光地「タヒチ」もスローツーリズムにシフト
 ー参考:タヒチ観光局、「スローツーリズム」を宣言

 ▶https://www.travelvoice.jp/20221116-152395

オーバーツーリズムは世界的にも問題視されています。環境保全や地域住民への負担を減らすため、「スローツーリズム」へ移行する動きは、今後世界的な傾向となるでしょう。





●今後の課題

上述の通り「スローツーリズム」には、オーバーツーリズムによる問題解決の糸口となるメリットもありますが、同時に課題もあります。下記はその一例です。

①食のこだわり

スローツーリズムはスローフード(地域の伝統的な食文化を重視し、食への関心を高める考え方)につながり、旅行者が「食」を通して自然環境に関心をもつ傾向にあります。

よって、


  • 地域特産を活かした伝統的な食の提供
  • 地産地消の推奨
  • オーガニック食品の提供

など、地域コミュニティーとの協働が必要となります。



②環境に優しい交通手段

スローツーリズムでは環境に優しいスローな交通手段の選択が見込まれます。よって飛行機や車よりも列車での移動が注目されています。欧州などでは環境問題に厳しいため、列車の選択が容易にできるようになっています。インバウンドにも優しい設計です。

しかし日本においては、環境に配慮して旅の移動手段を選択するという意識や行動が、未だ十分に浸透していません。また、移動に時間をかけてもかまわないという意識も十分ではないため、この点も課題となるでしょう。



③受け入れ側の姿勢

観光用に作られたサービスを提供するのではなく、従来からあるものを、いかに楽しんでもらえるかに焦点をおいて工夫することが重要となります。また、できるだけ多くの情報提供を行い、旅行者が自分で選択できるようにすることも必要でしょう。

 *参考:『スローツーリズムによる地域振興』
  ▶https://cres.hiroshima-u.ac.jp/ken19-02.pdf





スローツーリズムは、地方自治体との協働、他地域との連携などにより推進していくことで、オーバーツーリズムによる中型観光から分散型観光へのシフトが可能となり、地域活性化にも効果がある旅のスタイルです。

また、スローツーリズムは従来の「作られた観光旅行」スタイルとは異なり、旅行者自身の自由な選択がキーとなります。
それを実践するには、地域や観光地の受け入れ側が、旅行者がゆったりと楽しめる旅行の選択肢をいかに提供できるかが課題となるでしょう。

オーバーツーリズムを回避するため、受け入れ側も積極的に動くことで、地域活性化にもつながっていきます。今一度、どのような価値を提供できるかを検討してみてはいかがでしょうか。


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