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【注目の医療ツーリズム〜その利点と課題とは?】

新型コロナウイルス感染症の世界的な流行により、現在、人々の健康に対する意識が一層高まっています。そのため近年では、富裕層を中心に、外国を訪れて最新の治療や医療サービスを受ける「医療ツーリズム」が脚光をあびています。

また、その治療・医療サービスを受けるにあたって、入院や治療期間が長くなる場合は、現地滞在中に観光も兼ねるケースもあるため、「医療ツーリズム」はインバウンドニーズを見込んで世界各国で期待されています。

日本政府も2011年から「医療滞在ビザ」の発給を開始し、治療だけではなく人間ドックや健康診断美容整形なども対象に、医療を滞在目的とした外国人の受け入れ体制を整えてきました。

このように世界中で注目されている医療ツーリズムですが、昨今では円安の影響と上質な医療サービスが受けられるとあってか、医療ツーリズムの目的地として、日本が注目を集めています。

今回は日本における「医療ツーリズム」の利点と事例、そして「医療ツーリズム」に伴う課題と解決策について紹介します。


🔳日本における医療ツーリズムの利点


「円安効果で外国人にとっては自費診療でも恩恵がある」

海外においては日本のような国民皆保険制度は珍しく、国によっては診察や治療、入院に莫大な費用がかかります。また、先進国である日本のような、高度な医療技術や質の高い医療サービスの提供が困難な国もあります。特に日本の人間ドックのように、一つの病院で短時間に詳細な検査をしてくれるサービスは、世界においては稀です。

そのため海外の富裕層を中心に、日本を訪問して医療サービスを受けるケースが多くなっています。特に昨今は円安のため、自費診療であっても、外国の相場から見れば安く医療サービスが受けられるとあって、さらに注目を浴び、需要が伸びています。

「観光も併用した訪日で、地方における経済効果が見込める」

医療ツーリズムでは、診察や治療を希望する本人以外に、付き添いとして家族が同伴することが多く、彼らの宿泊や飲食などの需要を考慮したビジネスも活性化しています。また、都市の大病院だけではなく、地方で専門的な検査や治療を受けることが可能であれば、その地域としての経済効果も期待できます。地域の伝統文化の魅力や豊かな観光資源をアピールすることで、地域活性化にもつながるでしょう。


🔳事例

このような医療ツーリズムに、インバウンド市場の経済効果を期待して、近年さまざまな取り組みが行われています。

①日本の空の玄関口、羽田空港で最先端医療サービスを提供

2023年に羽田空港に隣接した大型複合施設​​「HANEDA INNOVATION CITY」が完成。この施設には先端技術を有する企業が集まっています。

中でも注目は、その立地の良さをアピールした病院の開設。再生医療や、がんゲノム医療、不妊治療などの分野における先端医療サービスを提供しています。
また医療機器メーカー、関連企業によるラボの立ち上げなど、総合的な「健康医療」の研究や取り組みを通して、「医療ツーリズム」の促進を目指しています。


②異業種の協働で日本の医療ツーリズムをアピール

「JTBとNECグループが協業して、​​訪日外国人向けに疾病リスク予測検査を提供」
JTBの医療コーディネーター部門が提供する人間ドックプログラムに、訪日外国人向けの最新検査を導入。
事前の食事制限が不要の上、少量の採血のみで将来の疾病リスクと現在の体の状態を可視化できます。医療ツーリズムにおける独自性をアピールしています。

*参考:JTB、訪日外国人に疾病リスク予測検査を提供、NECグループと連携で医療ツーリズム|トラベルボイス
 ▶https://www.travelvoice.jp/20231013-154394


③「山形の観光会社が販売する”日本古来の湯治+最先端医療サービス”パッケージ」
■みちのく癒され旅(​​山新観光株式会社)
 ▶https://yamagata-healthtourism.com/healthcare/p-072

日本には古くから「湯治」という温泉療法があります。この観光会社では、山形の美しい自然の中で高級温泉旅館に宿泊しながら湯治し、短時間で高精度のヘルスチェックが受けられるパッケージを販売しています。

ヘルスチェックの内容は、PET検査による画像とCTスキャンナによる画像を融合した「がん検診」。たった20分の検査で、がん発見や転移などの進行度、腫瘍の良性・悪性判定ができます。そして結果は、同日に担当医師が宿泊旅館を訪問して直接説明してくれます。




🔳課題

上述の通り、医療ツーリズムはインバウンド市場において大いに期待されていますが、同時に課題もあります。

①人手不足

日本は少子高齢化で労働人口が減少しており、多くの産業分野で人手不足が深刻化しています。医療分野においても、医師や看護師など医療従事者の人手不足が問題となっています。特に高齢化の進む地方においては、外国人患者にまで手が回らないのが現状です。そのため医療ツーリズムに消極的な医療機関もあります。


②自国民への診療において支障が出る可能性

医療ツーリズムによって訪日外国人が増加すれば、一部の医療機関や地方の小規模な医療機関などで診療の負荷が生じ、本来診察を受けられる日本人に対して支障が出る可能性があります。


③文化や習慣の違いなどから誤解が生じる

文化や言葉の違いから誤解が生じれば、治療に影響を及ぼすおそれがあります。専門的な医療知識をもった通訳が外国人患者と同行する、あるいは外国語ができ、海外の習慣を熟知したスタッフが病院に常駐していれば安心ですが、多くの場合は困難でしょう。




🔳解決策

①日本政府や自治体、そして医療機関が連携体制をとる

医療ツーリズムの成功には、官民が協力して医療インフラの拡充や制度の構築、支援策の提供が必要となります。特に人手不足の解消のためには、人材育成と労働環境の改善やサポートの強化、場合によっては、外国人の医療従事者の受け入れも考慮すべきでしょう。


②外国人向けの文化的な教育やサポートを充実させる環境づくり

言葉や習慣によって生じる誤解を避けるためにも、外国人患者に対して、事前に政府や医療機関による文化的な教育やサポートを充実させれば、訪日後でも安心して医療サービスを受けられるでしょう。




医療ツーリズムは経済効果も高く、世界的に注目されています。中でも日本は、その先端医療技術や上質な医療サービスの提供、また豊富な観光資源によって外国人富裕層から人気がありリピーターも多いです。そのためアイデア次第では地域活性化につながる可能性があります。

しかし、医療ツーリズムを持続可能なものとして成功させるためには、医療従事者の人手不足や医療インフラの拡充など、さまざまな課題もあります。

そのため、政府や自治体、医療機関が連携して制度づくりや支援策の提供、また外国人患者が安心して治療を受けられるような環境づくりが重要となるでしょう。

医療ツーリズムを好機と捉えるか否かは、官民連携による取り組みにかかっているのです。

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